
宮沢賢治作 注文の多い料理店をモチーフに、デザイン、製作いたしました。
2025年の新作ブローチ作品です。
私の作品の中では、マニアックな部類の作品です。
お洋服に合わせていただくこともできますし、お写真のようにデイバッグに合わせても楽しいブローチです。
[あらすじ]
東京から二人の紳士が狩猟に山にはいります。
しかし獲物はとれず、案内人ともはぐれてしまいます。
さらに連れていた猟犬たちも突然、死んでしまいます。
二人は諦めて宿に向かうことに。
そして帰路にて看板を見つけます。
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◇RESTAURANT西洋料理店◇
◇WILDCAT HOUSE 山猫軒◇
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二人は店へと入ってしまいます。
店内では、但し書きが。
「当軒は注文の多い料理店ですから、どうかご承知ください。」
二人は、人気のあるお店だと思い込みます。
店内では、進むたびに扉があり、それぞれの扉には注意書きが。
「お客さま方、ここで髪をきちんとして、それからはきもの泥を落してください。」
次の扉には。
「鉄砲と弾丸をここへ置いてください。」
さらに、次の扉には。
「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」
さらに。さらに。
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください。」
などと、次々と注文がはいります。
それでも、二人は美味しくいただくために、作法や理由があるのだと受け止め、奥へ入っていくのでした。
そしてその先の扉には。
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。
お気の毒でした。
もうこれだけです。
どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。」
ようやく。
二人は気付きます。
注文をするのは、向こう側だと。
そして、自分達が料理されているのだと。
二人は戻ろうとしますが、後ろの扉が開かず、戻れません。
恐怖のあまり、二人の顔は紙くずのようにくしゃくしゃになります。
するとそのとき。
扉を破って死んだはずの2匹の猟犬が現れ、ぐるぐると回り、先の扉に向かって突進します。
激しく争う音が聞こえます。
すると。
。。。
店内にいたはずの二人は山の中で立っていました。
そこに案内の猟師も現れ、二人は無事に宿へと辿りつき、東京に戻ることができますが、クシャクシャの顔はもどりませんでした。
[製作あとがき]
注文の多い料理店は、今まで幾つかのバリエーションにてペンダントトップを製作してまいりました。
円形ブローチタイプのご要望も多くて何年か構図を練っておりました。
森の中なので木々を描くべきか。
狂ったような猟犬を描くべきか。
ただ、描くものが多くなると、このお話のポイントが伝わりにくくないか。
また、最初の下絵では、二人の紳士の向こうには、レストランらしい建物を描いていました。
しかし少しばかり平凡な感じがしました。
そこで、レストランの恐ろしい実体を表すことにしました。
そして狩猟に入った紳士達が、猫が作り出した異空間に迷い込んでしまった感じを出すことを考えました。
そこで、フレームには現実と夢が交差するようなイメージで線を入れました。
そんなこんな、あれやこれやと、彷徨いながら製作した作品となりました。