· 

長靴をはいた猫

自信たっぷりの表情の長靴を履いた猫が獲物の入った袋を担いている場面の真鍮製ブローチです。
長靴をはいた猫 真鍮製ピンブローチ アトリエ芸文 井上康太郎 

フランスの詩人・童話作家ペローの「長靴をはいた猫をモチーフにピンブローチのデザイン・製作をいたしました。

 

[あらすじ]

ずいぶんと昔のお話です。

 

粉ひき男が亡くなり、三人の息子で遺産分けをしました。

と言っても、とても貧しかったので、大して何もありませんでした。

 

結局、

長男は、風車をもらい、

次男は、ロバをもらい、

三男は、残りの猫をもらいます。

 

三男は、猫では仕事に使えないと不服を漏らし、すっかりしょげてしまいます。

 

猫は、言いました。

 

「心配なさらないでください。私に袋と薮や沼地の為の長靴をこさえてください。そうすれば、お喜びになることになるに違いありません。」と。

 

三男は猫の言う通りにしました。

         

まず、猫はウサギを放し飼いにしている場所で、袋に食べ物を入れ、ウサギが袋に入るのを待って捕まえます。

 

そして、王様のお城へ出向き、御目通りを願います。

 

猫は王様の前へ出てお辞儀すると、

「王様、わたくしは主人カラバ侯爵からの言いつけで、狩で獲りましたウサギを王様へ献上にあがりました。」と。

 

 

カラバ侯爵というのは、猫が三男に適当に付けた名前です。

 

王様は「それはありがとう。ご主人に、よろしく御礼を言っておくれ。」と。

 

猫は、今度は麦畑に隠れ、袋を開けて待ち山鳥を捕えます。

 

ウサギとおなじように、王様の所へもって行きました。

 

それからも、カラバ侯爵の遣いと名乗り、次々と獲物を王様へ献上したのでした。

 

その度に猫は、おもてなしをうけ、王様のお城の様子もわかってきました。

 

そしてある日のこと、王様がお姫様を連れて川遊びにお出かけになる事を聞きつけました。

 

猫は、三男に話しました。

 

「私の言う通りにすれば、幸せになりますよ。川に行って水浴びすればよいのです。」と。

 

三男は訳がわかりませんでしたが、猫の言う通り水浴びを始めました。

 

そこへ、王様の馬車が近づいてきました。

 

猫が叫びます。「助けてください。カラバ侯爵がおぼれそうです。」

 

王様は馬車の窓から首を出し、家来達にカラバ侯爵をお助け申せ、と言いました。

 

家来達が川でカラバ侯爵を引きあげている間に、猫は王様のところへ行きました。

「主人は水浴び中に、着物を盗まれ、着るものがございません。」と。

 

王様は衣裳係に、上等な着物を、急いで持ってこさせ、カラバ侯爵にお着せ申せと言います。

 

三男は衣装のおかげで、侯爵らしく上品になりました。

 

それを見たお姫様は、すっかり侯爵に恋心を持ちます。

 

王様はカラバ侯爵を馬車に乗せて、一緒に旅する事になりました。

猫は、得意顔で馬車のかなり前方を歩いていきます。

 

猫は道ゆく先の数々のお百姓さんに、「もうじき王様が馬車で、お通りになるが、この農場は誰のものかのお尋ねがあれば、カラバ侯爵だとお答えしなければならない。もしそうしなかったら・・・」と言って脅しました。

 

やがて王様が通りかかり、この農場の持ち主をお尋ねになりました。

そして、お百姓さん達は口を揃えてカラバ侯爵と答えました。

 

王様はカラバ侯爵が広大な領地をもっていると騙されていくのでした。

 

猫はさらに先に進み、この界隈の本当の地主である鬼の城に着き、さも心から敬っているように挨拶をします。

鬼はすっかり喜びます。

 

そこで猫は、「あなた様は、ケモノに変身できるとお聞きしております。獅子や象に、おなりになれるのでございますか。」と、尋ねました。

 

鬼は、「獅子になってやろう。」といって、獅子に変身します。

 

そして猫は、小ネズミにもなれるか尋ねました。

 

鬼は、小ネズミに変身します。

 

そして猫は、その小ネズミにとびかかり食べてしまいました。

 

そのとき、王様の馬車の音がきこえてきました。

猫は門の外へ出て王様に申しました。

「さあ、カラバ侯爵の城にお入りくださいませ。」と。

 

お城では、もともと鬼が友人の為に用意していた食事が、王様に振る舞われました。

 

王様はカラバ侯爵が人柄も良く、お金持ちと思い、ついにお姫様との結婚を申し出ます。

 

カラバ侯爵は敬礼ののち、王様の申し出をお受けし、猫も貴族にとり立てられ、気楽に過ごしたのでした。

 

(終わり)

 

 

[製作あとがき]

 

親ゆずりの財産がなくても、智恵を使い、時にハッタリを利かせて、たくましく生き抜く痛快なお話ですね。

 

下絵と試作を繰り返し、このデザインとなりました。

 

自信たっぷりの猫の眼を描くか、描かずに想像に任せるかを、相当迷っておりましたが、描くことにしました。

 

服装はハッタリを利かすために、貴族風として、袋を担がせ、長靴を履かせました。

 

ブローチピンは、裏面に縦に入っております。

 

楽しんでいただけましたら幸いです。

 

#長靴をはいた猫

#GIFUクラフトフェア

#真鍮ブローチ