· 

セロ弾きのゴーシュ

岐阜クラフトフェア 出展作品 アクセサリー アトリエ芸文 真鍮製のペンダントトップです。セロ弾きのゴーシュ Gorsch the Cellist。透かしになっております。ゴーシュの周りには、猫、ネズミ、たぬき、小鳥がおります。
セロ弾きのゴーシュ Gorsch the Cellist岐阜クラフトフェア出展作品 アトリエ芸文

【セロ弾きのゴーシュ】

 

宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ 」のペンダントトップをデザイン・製作いたしました。

 

[あらすじ]

ゴーシュは街の活動写真館でセロ(チェロ)を弾く係でしたが、とても下手でした。

今日も楽団で練習をしていましたがゴーシュは、タイミングが合わず何度もやり直しとなりました。楽団長からは叱られ楽団員からも嘲笑の的でした。

 

ゴーシュは家に戻りセロの練習を始めます。

夜中過ぎまで弾いていました。

 

すると、三毛猫が現れてトマトをお土産に持ってきたと言います。

ゴーシュは楽団長に叱られ、むしゃくしゃしてましたから、猫にあたります。

「おれの畑からむしったな、どこかへ行ってしまえ。」

 

すると、猫は肩をまるくして、にやにやとして

「先生、そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。シューマンのトロメライを弾いてごらんなさい。聴いてあげますから。」

 

ゴーシュは、しやくにさわりましたが、猫がゴーシュの音楽を聴かないと眠れないというので弾くことになりました。

 ところが、ゴーシュが弾いたのはインドの虎狩という曲で、怒った象のような勢いで弾いてみせます。

すると猫はしばらく首をまげて聴いてましたが、眼や額からぱちぱち火花を出し、「先生、もうたくさんです。たくさんですよ。」と言って行ってしまいます。

 

次の晩はゴーシュが練習をしていると、天井の穴から鳥のカッコウが降りてきて「音楽を教わりたいのです。」と言います。

「先生どうかドレミファを教えてください。わたしはついて歌いますから。」と。

ところが、ゴーシュが弾き始めるとカッコウは、歌って鳴いてみたものの、音がなかなか合いませんでした。ついにゴーシュは怒ってしまい、カッコウも飛び立ってしまいますが、ゴーシュのほうが音があっていなかったようでした。

 

 

そして次の晩もゴーシュは夜中過ぎまでセロを弾いてました。

今度は狸の子が入ってきました。

「こら、狸、おまえは狸汁を知っているかっ。」と、どなりました。 

狸の子はぼんやりした顔をして、どうもわからないというように首をまげて考えていましたが、しばらくたって、「狸汁って、ぼく知らない。」と言いました。

 

そして、狸の子は背中から棒きれを二本出し、「愉快な馬車屋」を弾くようにせがみます。

ゴーシュが弾き出すと、狸の子は棒をもってセロの駒の下のところを、ぽんぽんと叩きはじめました。それがなかなか上手いのでゴーシュは面白いと思いました。

最後まで弾くと、狸の子はしばらく首をまげて言いました。

「ゴーシュさんは、この二番目の弦を弾く時に遅れるね。なんだか、ぼくがつまずくようになるよ。」

ゴーシュは、はっとしました。その弦はどんなに手早く弾いても少し経ってからでないと音が出ないような気がしていたのでした。そのまま朝方まで練習を続けたのち、狸の子は帰っていきました。

 

 

次の晩に来たのは野ねずみでした。ちいさな子をつれてゴーシュの前で、おじぎをして言います。「先生、この子の病気を治してやってください。」

 

「おれが医者などやれるもんか。」とゴーシュは、むっとして言いました。

すると、野ねずみのお母さんは言います。

「先生はみんなの病気を治しておいでになるではありませんか。」

「先生のおかげで、ウサギさんのお婆さんも治りましたし、狸さんのお父さんも治りました。意地悪なミミズクまで治されたと聞いてます。」

どうやら、ゴーシュの家の床下に入ると、セロがゴウゴウと響き、あんま代わりとなり、血行が良くなって病気が治るということらしいとわかります。

 

そこでゴーシュは、ねずみの子供をセロの孔から中へ入れて、何とかラプソディとかいうものをゴウゴウ、ガアガアと弾いてみました。

 すると間もなく子供のねずみが出てきて、しばらくは眼をつぶったまま震えていましたが、元気に走り出しました。お母さんねずみはゴーシュにお礼を言い、ゴーシュも、ねずみの親子にパンのかけらを与えました。

そしてついに、ゴーシュも疲れてぐうぐう眠ってしまいました。

 

・・・

 

それから六日目の晩でした。

街の公会堂では、楽団が第六交響曲の演奏を終えて、拍手と共にアンコールの声がかかります。

楽団長は、「おい、ゴーシュ君、何か出て弾いてやってくれ。」と言います。

ゴーシュは、あっけにとられました。

「どこまで人をばかにするんだ。よし見ていろ。」と、奮起し舞台の真ん中へ出ました。

 

あの猫の来た時のように怒った象のような勢いで、「インドの虎狩り」を弾きました。

 

聴衆は、一生懸命に聴いています。ゴーシュはどんどん弾きました。

演奏を終えたゴーシュは、逃げ込むように楽屋にもどります。

どうせ、嘲笑の的になると思いながら。

 

ところが、楽団長が言います。

「ゴーシュ君、よかったぞお。十日の間にずいぶん仕上げたなあ。十日前と比べたら、まるで赤ん坊と兵隊だ。やろうと思えばいつでもやれたんじゃないか、君。」

楽団の仲間も「よかったぜ」とゴーシュに言いました。

 

その晩、ゴーシュは自分の家へ帰ってきました。そして窓をあけて、カッコウの飛んで行った遠くの空を眺めました。

 

[製作あとがき]

昨年の岐阜クラフトフェアでの人気作品「セロ弾きのゴーシュ」のブローチデザインを元に、ペンダントトップ専用の下絵を起こして製作いたしました。

小さなペンダントトップに、たくさんの動物達を収めるのにいろいろと工夫いたしました。


そして原作を読み返して、あらすじを書いてみました。

 

セロがゴウゴウと鳴るという表現は、宮沢賢治らしくてよいですね。


私も、糸鋸機をゴウゴウと鳴らして、製作しました。